もう一つが、裏金問題で高まった政治不信を解消するための政治資金規正法改正だ。(1)政治資金収支報告書の虚偽記載などが判明した場合、秘書や会計責任者だけでなく国会議員本人も立件される「連座制」を導入する(2)パーティー券購入の公開基準が20万円超となっているが、一般の寄付と同様に5万円超に引き下げる(3)使途を公開しなくともよい政策活動費を見直す──などが柱だ。自民党内には抵抗もあるが、世論の厳しい反応を受けて、岸田首相が抜本改正に踏み切れるかどうかが焦点だ。

 立憲民主党など野党側は連座制の導入や企業団体献金の見直しなどを求めている。ただ、当面は自民党と歩み寄って法改正を実現し、企業団体献金の見直しなどは将来の検討課題とする妥協案も浮上している。与野党が政治資金規正法改正で成果を出して衆院の解散・総選挙に持ち込もうという思惑は、岸田首相と立憲民主党に共通する。

 5月初旬にJNNが発表した世論調査によると、有権者が次の衆院選で望むのは「自公政権の継続」が34%だったのに対し、「立憲などによる政権交代」が48%に達した。裏金問題は、自民党長期政権の腐敗構造と真相解明ができない「もたれあい体質」を明るみに出した。格差拡大や少子化への無策など、政策の行き詰まりも露呈している。岸田首相による解散・総選挙か、総裁選での内輪もめか。いずれにしても自民党が再生に向けて動き出す気配はない。衆院3補選の結果は自民党政治崩壊の序章に過ぎない。(政治ジャーナリスト・星浩)

AERA 2024年5月20日号より抜粋

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