5月病という言葉があるが、この季節はメンタルヘルスに気を配りたいもの。心の病を経験した当事者にインタビューした記事を改めて紹介する。(「AERA dot.」2023年10月21日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時)

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入院中、「自分は病気なんだ」「わがままじゃなかった」と安心して初めて、体形の変化に気づいた (c)もつお/KADOKAWA 『高校生の娘が精神科病院に入りバラバラになった家族が再び出発するまで』から

 高校1年生のある日、“神様”が現れた。不安を感じるとその声が聞こえ、指示通りすると不安が消えた。やがて神様の命令に支配され、摂食障害強迫性障害で精神科病棟に入院することになった──。病気の受容と回復に至るまでの道のりを描いた漫画が注目を集めている。漫画家のもつおさんが伝えたいこととは。AERA 2023年10月23日号より。

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 なぜ、自身の経験を描こうと思ったのだろうか。

「自分なりに病気に区切りをつけるためでした。大学3年生になって、摂食障害の症状も落ち着いてきましたが、病気のことは誰にも話していませんでした。神様の存在も含めて誰かに伝えてみたら、『治ったと実感できるかな』と思ったんです」

 コミックエッセイの公募を見つけ、最初に「神様」の絵を描いた。下描きもせず、わずか2~3日で一気に描き上げたタイトルは「わたし宗教」。応募して入賞し、SNSで公開されると大きな反響があった。摂食障害の当事者やその家族からの共感も多かった。

「『この話を読んで、明日を生きるのが楽になれる人がきっといる』という感想を見つけた時は、描いてよかったと思いました」

 それをベースにしたデビュー作が完成するまでには、3年がかかった。

「当時の感情がフラッシュバックして、長時間描くのが難しいことがありました」

 神様のことを描いていいのか、悪者にしていいのか、不安に駆られることもあった。神様とは何だったのか、改めて自分と向き合うことにも時間をかけた。作中では、もつおさんが辿りついたその正体も明かされている。

「時間がかかっても諦めなかったのは、同じ状況で苦しんでいる人のためになればという思いがあったからです。私自身、病気のことを誰にも相談できなかったのが一番つらかったから」

 1作目『高校生のわたしが精神科病院に入り自分のなかの神様とさよならするまで』をきっかけに家族との関係を見つめなおし、2作目『高校生の娘が精神科病院に入りバラバラになった家族が再び出発するまで』では家族の視点も描いた。先日刊行した3作目『精神科病棟の青春 あるいは高校時代の特別な1年間について』では、自身の体験をベースにセミフィクションの形をとって入院中の日々を綴った。

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