そして、カメラが回っているのも気付いていない状態で「1億いきました」と、億超えを高らかに宣言した。スタジオでVTRを見ていた出演者たちも、この突然の告白に驚いていた。
クロちゃんが億を超える貯金を積み重ねることができた理由は何なのか? それは、彼が紛れもない超一流のスター芸人だからだ。「超一流」の条件とは、期待に応えた上で、期待を上回る結果を出すことだ。この点で彼の右に出る者はいない。
タレントが番組に起用されるときには、求められている役割というものがある。それをきちんとこなすことができれば、自然に仕事は増えていくだろう。スタッフの期待に応えるというのは重要だ。
クロちゃんに求められるさらに上
でも、クロちゃんに求められているのはもう1つ上の段階のことだ。期待に応えるのは当然として、それを超える結果を出してほしいと思われている。そこにクロちゃんという芸人の本当の価値がある。
今回の企画でも「本当に死んだと思い込む」というのは想定内でも、「おう吐する」というところまでは多くの人には想定外だったはずだ。
もちろん、彼自身もあの場面で吐こうと思って吐いたわけではないだろう。本人も預かり知らぬ領域で、笑いの神が彼に力を与えてくれている。そう、超一流の芸人とは「神を降ろせる人」のことだ。
しかも、クロちゃんの恐ろしいところは、そこまでの潜在能力を持っているのに、特に尊敬もされていないし、好かれてもいないというところだ。ほどよくなめられている状況だからこそ、あの芸風を貫くことができる。
いまや誰も踏み込めない領域に達している、億超えサンドバッグ芸人のクロちゃん。『水曜日のダウンタウン』のクロちゃん企画は、笑いの神を降臨させるセレモニーなのだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)