持ち株会社のトップは、各社の連携とサービスの相乗効果を図る司令塔。2019年、「IOWN」の構想を打ち出した。IOWNは「Innovative Optical and Wireless Network」の頭文字をつないだ愛称で、光と電気の通信技術が融合した新たなネットワーク。「アイオン」と呼んでいる。
NTTの研究所で光素材を半導体チップに乗せる技術を確立したのが引き金で、新技術を活かした様々な構想が、実現し始めている。「電気から光へ」の普及が進めば、これまでネットの世界でリードしてきたプレーヤーたちを、入れ代える「ゲームチェンジ」の踏み台となる。
スマホに入っている半導体にも光技術が入り、送受信できる情報の量も速度も飛躍的に伸びる。発熱量は減り、冷やす内部装置も不要となって、電池がはるかに長持ちする。1日に1度している充電が、100日に1度でよくなるかもしれない。
一部利用が始まったIOWNの次の利用拡大は2年後ごろで、一般の人々が身近に接するようになるのは7、8年か10年先。でも、停滞したと言われてきた日本の最先端技術の開発が、また大きく動き、遅れた部分を取り消せる可能性がある。
2022年6月に社長から会長になった。翌年から日本経団連の副会長も務めている。IOWNが国内産業に「ゲームチェンジ」を促すか。従業員が約34万人というマンモス企業グループのトップであっても、常に頭に『源流』から流れている「利用者の思いと便利さ」へ向き合う姿勢がある。澤田さんの眼が向く先に、その流域が、大きく広がっている。(ジャーナリスト・街風隆雄)
※AERA 2024年5月13日号