広大なアフリカ大陸のうち25カ国を訪ねてきた、フリーランスライターで武蔵大学非常勤講師の岩崎有一さんが、なかなか伝えられることのないアフリカ諸国のなにげない日常と、アフリカの人々の声を、写真とともに綴ります。
海外を旅したり、住んだりすると、時々感じる程よい距離感がある。アフリカの酒場で感じるそれは、決して孤独なものではなく、かと言ってなれなれしいものでもなく、当たり前のようにそこに存在することを許してくれるような包容力を持っている。今回は、そんな酒場のお話です。
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アフリカの酒場で過ごす時間は、至福のひとときだ。この時を過ごすために現地を訪ねていると言っても、うそにはならないと思う。
例えば、西アフリカに位置するブルキナファソのボボデュラッソで訪ねた酒場は、こんな感じだ。
表通りを歩きながらふらりと入店したその店は、中庭のある開放感あふれる酒場だった。空いている席に腰を下ろし、店員に声をかける。注文を取りに来た女性は、メニューを携えていない。ましてや日本のようにテーブルにメニューが置かれているわけでもなかった。店にあるのは、その国に流通しているビール数種と、コカコーラやファンタなどのソフトドリンクが数種のみ。ビールの銘柄を伝え、しばし待つ。
先ほど注文を取ってくれた女性が、針金やツルを編んで作られた専用のカゴに、ビール瓶とコップと、栓抜きとコースターを入れて戻ってくる。洗いたてのコップに、瓶の表面が氷結するほどに冷やされたビールを注ぎ入れてくれた。なるべく折れ曲がらないようにそっと開けた王冠は、ハエがたからないよう、再びビール瓶の口に戻される。用意されたコースターも、コップの下に敷くためではなく、飲んでいる途中にハエがたからないようコップにふたをするためのものだ。飲み口を常になにかで塞いでおくのは、アフリカで広く見られる流儀のひとつとも言える。
日本のものと比べると、ずっと軽やかで爽やかなビールをゆっくりと喉に通し、空を仰ぐ。その日の出来事を顧みながら、出会った一人一人の言葉を反すうする。ああ、この地を訪ねてよかったと、しみじみと思いながらコップを傾けていると、女性の店主が、「万事OK? 問題なし?」と声をかけてくれた。「この1杯を飲むことができて、私はとても満足です」とこたえると、彼女は目を細めた。
周りでは、仕事帰りと思しき男性、ささやくように語らいを続ける恋人たち、笑い声の耐えない友人たちなど、各自各様にビールを楽しんでいる。初めて訪ねた店では独り酒となることがほとんどだが、アフリカの酒場で寂しさを感じることはない。話し相手が欲しいときには、周囲の客に話しかければ、いくらでも付き合ってくれる。かといって、独りで思索を深めたいときには、しつこく話しかけられることもない。この酒場でも、明らかによそ者である私に対して、店主も店員も、客人たちも、過剰にサービスすることもなければ、冷たくあしらわれることもなかった。この土地に住む人々と同じように接してくれることが、私にはありがたかった。