お互い自分の意識とは別の速度でどんどん「芸能人」「有名人」になっていく最中だったあの頃、ミトちゃんと過ごした時間は、30過ぎでテレビの世界に飛び込んだ女装にとって、他の誰とも共有できなかったまさに「遅い青春」のようでもありました。

　私は何度か、ミトちゃんの「戸惑い」「不安」そして「覚悟」を、目の当たりにした記憶があります。そしてそれらはすべて彼女の可能性であり魅力であることも知っています。魅力というのは脆く儚いものです。だけどそれごと包み込んでくれる伴侶に出逢えた彼女が羨ましい。よもや私が他人様の結婚にこんな感情を抱くとは……。

　私の家に来て、ろくに会話もせず、ひたすら何時間も水槽の熱帯魚を黙って観ていた姿を、私は放っておくことしかできませんでしたが、今なら後ろから抱きしめてくれる男がいるわけです。羨ましい以外に何だというのでしょうか。おめでとう。ほどほどにお幸せにね。

ミッツ・マングローブ／1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場～語り亭～」「5時に夢中！」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

※週刊朝日 　2023年4月14日号

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ミッツ・マングローブ

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ミッツ・マングローブ／1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場～語り亭～」「5時に夢中！」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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