
手軽に楽しめる写真画質のA3対応複合機
インクジェットプリンターの普及に伴い、写真のプリントも大型化してきた昨今だが、写真印刷向けのA3ノビプリンターの導入は(住環境や家族の理解などにより)なかなか許されないことが多いようだ。一方、いまや一般用途でインクジェットプリンターというと、最大A4までながらコピー・スキャナー機能を搭載した複合機が主流。写真プリント以外の用途にも役立つためか一般家庭にも広く普及している。逆に、便利な複合機の存在が(高画質とはいえ)印刷しかできないA3プリンター導入の(家庭での)障害にもなっているようだ。そうした諸事情によりA3ノビプリンターの導入が難しかった人に向けてエプソンが投入したのが、A3対応の複合機のEP-10VAだ。コピーやスキャナー機能があるとなれば導入のハードルは下がり、写真愛好家の悩みを解消する可能性のある一台だ。
A4対応の複合機は小型化も進むが、写真愛好家からするとプリントサイズがやや中途半端であり、モノクロプリントでの黒の階調表現が、写真専用機と比較すると不満が残るものだった。EP-10VAは、横幅が50㌢を切るコンパクトサイズでありながら、A3写真プリントと複合機としての機能を両立している(コピー・スキャンは最大A4)。

最大の特長は、写真画像の補正をプリンター単体でできるようになったことだ。EP-10VAの操作は前面に配置された液晶パネルに集約されており、タッチで全ての操作ができる。作品プリントのために用意された多くのメニューでは、その補正効果を液晶パネルで確認できるだけでなく、特に補正量を少しずつ変えた画像を1枚の紙に一覧印刷する機能が便利。どの補正値が適切なのかが簡単にわかる。


写真の取り込みは、本体に搭載されたメモリーカードスロットから行う。パソコンや画像処理ソフトを駆使して作品を作り上げるためにはモニターの性能や設置環境の整備、ソフトウェアの設定など手間もかかりハードルも高い。EP-10VAのパネルの案内に従って操作するだけですぐに結果が得られる意義は大きい。


また一台でさまざまな用途に使えるように前面の用紙トレイは2種類の用紙をセットできるようになっている。プリンターが「一家に一台」で家族各々の用途が異なることを考えるとうれしい配慮だ。

染料インクはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの基本4色のほか、レッドとグレーの6色で構成。モノクロの暗部はブラック、ハイライトはグレーと使い分けることで、階調再現を広げている。

カラー写真とモノクロ写真の両立は、これまでのA4複合機では、考えられなかったことだ。複合機と写真プリント機の同居もまたしかりだ。それが一台になることがもたらす効果ははかりしれないことを考えると、A3プリント対応でも小型ということを含めて、導入を検討したい一台だ。
◆ 小城崇史
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●最高解像度:5760×1440dpi●インク:6色染料独立型インク(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、レッド、グレー)●用紙:最大A3縦。フロントトレイ:A4最大100枚(75g/平方メートル)、ハガキ最大60枚(上トレイ 最大20枚、下トレイ 最大40枚)、リア(背面)トレイ:写真用紙(最大枚数5枚、最大サイズA3、最大紙厚0.6mm)、普通紙(最大枚数10枚:75g/平方メートル、最大サイズA3)●スキャナー:CIS方式。最大有効領域:216×297mm。解像度:主走査4800dpi/副走査4800dpi。読み取り解像度:50~4800dpi(1dpi刻み)、7200dpi、9600dpi。読み取り階調:RGB各色16bit入力、1・8bit出力●接続:USB2.0×2、有線LAN:10/100BASE-TX、無線LAN:IEEE802.11b/g/n、赤外線:IrDA(Ver.1.3 準拠、IrSimple対応) ●大きさ・重さ:収納時:479×395×168mm、使用時:479×743×453mm・約9.5kg(インクカートリッジ、電源ケーブル含まず)●対応メモリーカード:コンパクトフラッシュ、メモリースティックDuo、SDメモリーカードなど●価格:オープン(実売4万9650円)

