11月19日は「鉄道電化の日」です。昭和31年(1956)に東海道本線の全線が電化されたことから、鉄道電化協会が昭和39年(1964)に、この日を記念日に制定しました。首都圏などでは電車が市民の足として、重要な役割を果たしています。
ところが、北海道ではJR全線の2割ほどしか電化されていません。そんな北海道に来年3月、新幹線開業と同時に、新しい“電車”、「はこだてライナー」が走ります。
電車というと 「路面電車」 を思い浮かべる道民。JRの列車をいまだに 「汽車」 と呼ぶ…。
北海道で電化されている列車が走っているのは、札幌・旭川・函館・室蘭近郊などの一部だけ。都会のように利用客が多い路線では電化しても採算が合いますが、北海道は土地が広く、しかも利用客が少ない路線が多いので、採算が合わず、電化されていないところがほとんどです。
「汽車」はもともとは、煙をはく蒸気機関車のことを指していました。ところが、蒸気機関車が姿を消しディーゼル車になっても、列車を「汽車」と呼ぶ習慣は、北海道に限らず消えていないようです。特に北海道の札幌や函館では市内を路面電車が走っているので、ほとんどの人が路面電車を「電車」、それ以外の列車を「汽車」と呼んで区別しています。
“新函館北斗―函館” を走る電車、「はこだてライナー」。新幹線開業に合わせ、準備着々。
ほとんどの市民が路面電車のことを「電車」と呼ぶ函館市ですが、来年3月の新幹線開業に合わせ、鉄道の“電車”が新しく走ります。その名も「はこだてライナー」。733系1000番台。北海道新幹線の始発、新函館北斗駅(北斗市)と、在来線の函館駅を結ぶアクセス列車で、全長約18キロをピストン輸送します。1編成3両で、定員441人。
「はこだてライナー」のホームは新幹線と同じフロアーにあるので、乗り継ぐときは階段を上り下りせずに移動することができます。
運行区間のうち、函館―五稜郭はもともと電化されているので、新たに、五稜郭―新函館北斗の電化工事が行われました。11月12日からは架線への試験送電が始まっています。
とても短い距離ですが、函館に“本格的”な電車が走ります。函館では「電車」というと路面電車のことを指し、それ以外の列車を「汽車」と呼ぶ人がほとんどですが、来年3月から新しく走る電車、「はこだてライナー」は、果たして正しく「電車」と呼ばれるのでしょうか…。
“木古内―函館” を結ぶ 「いさりび鉄道」。海沿いの景観をウリに 「はこだてライナー」 と対抗 !?
来年3月、北海道新幹線開業とともに、JR江差線を引き継ぐ「道南いさりび鉄道」。現在北海道では、新幹線を利用して観光客に函館駅に来てもらう場合、「はこだてライナー」と「いさりび鉄道」、どちらを使うのが便利でお得か、ちょっとした“論争”になっています。
東京から北海道新幹線に乗ると、1日のうち何本かは、津軽海峡を渡ったところで、函館近郊の木古内(きこない)に停車し、その後、終点の新函館北斗に停まります。
函館駅に鉄道で行く場合、2つのルートが考えられます。
1つは、新幹線で終点の新函館北斗まで行き、そこから「はこだてライナー」に乗り換えるルートです。このルートだと、木古内―新函館北斗―函館は約40分。
もう1つは、終点の新函館北斗まで乗らず、途中の木古内で下車し、木古内―函館を「いさりび鉄道」で行くルートです。これだと木古内―函館は約1時間。「はこだてライナー」を利用するよりも20分ほど時間がかかってしまいます。ただ、「いさりび鉄道」利用だと、JRよりも560円安くなります。また、海沿いを走るのも“ウリ”になっています。車窓から見える津軽海峡からは、晴れていれば、はるか青森県を望むこともできます。
函館駅まで鉄道を利用する場合、早く行ける「はこだてライナー」を利用するか、それとも、のんびり「いさりび鉄道」を利用するか、どちらにしようと悩むのもまた、旅の楽しさでもあります。
〈参考:北海道新聞2015年11月4日号2面 「函館へ乗り継ぎは いさりび鉄道 お得感」〉
北海道新幹線の開業によって、函館-青森を結ぶ特急列車「(スーパー)白鳥」や、札幌―青森を結ぶ夜行急行「はなます」が廃止され、津軽海峡を渡る旅客列車は新幹線だけになってしまいます。「白鳥」や「はなます」といった、北海道になじみの深い言葉を使った列車が消えてしまうのは、なんとも寂しいかぎりですが、来春3月には新しい列車が登場します。新幹線を利用して函館に観光に行こうと計画するとき、「いさりび鉄道」、略して「いさ鉄」で車窓の景色を楽しむか、新しい電車、「はこだてライナー」で早く行くか、はたまた、行きと帰りでルートを変えるか…。あれこれ悩むのもまた旅の一興ですね。