フジコ・ヘミング/ スウェーデン人の父と日本人の母のもと、ドイツに生まれる。東京音楽学校(現東京芸術大学)を卒業後、ベルリン国立音楽大学に留学。1995年に帰国。99年、NHKで放送された「フジコ~あるピアニストの軌跡~」が大きな反響を呼び、デビューCD「奇蹟のカンパネラ」が200万枚を売り上げる。(撮影:植田真紗美)
フジコ・ヘミング/ スウェーデン人の父と日本人の母のもと、ドイツに生まれる。東京音楽学校(現東京芸術大学)を卒業後、ベルリン国立音楽大学に留学。1995年に帰国。99年、NHKで放送された「フジコ~あるピアニストの軌跡~」が大きな反響を呼び、デビューCD「奇蹟のカンパネラ」が200万枚を売り上げる。(撮影:植田真紗美)
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 リストの難曲「ラ・カンパネラ」の演奏などで社会現象を巻き起こした人気ピアニストのフジコ・ヘミングさん(本名/ゲオルギー・ヘミング・イングリット・フジコ)が4月21日、すい臓がんで亡くなったと、2日自身の公式サイトで明かされた。92歳だった。葬儀はすでに近親者で行われ、後日お別れの会を検討している。99年に放送されたNHKのドキュメンタリー番組により、60代後半から人気ピアニストとして活躍するようになった。フジコ・ヘミングさんを追悼し、過去のインタビュー記事を振り返る。(「AERA dot.」2022年9月3日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時)

【写真】次々に曲を弾き始めるフジコ・ヘミングさん

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「魂のピアニスト」と評され、コロナ禍でも世界中を飛び回って活躍するフジコ・ヘミングさん。演奏や私生活で大切にしていることとは。

 インタビューは、フジコさんの下北沢の自宅で行われたが、「毎日の練習時間はどのくらいですか?」と質問したとき、「最近、体が弱ってきたのを感じますから、あんまり練習しないようにしています。そのほうが、次のコンサートの本番で調子がいいって気がついたから」と話していた。ところが、写真撮影になっていざピアノの前に座ると、次々に曲を弾き始めるのだ。部屋にいるたちも、うっとりと目を閉じて、フジコさんのピアノを聴いている。

「動物は、子どもの頃から好きね。私のひいおじいさんが、スウェーデンで、犬猫病院の先生をしていたそうで、うちではみんな、犬とか猫が好き。何なら、ゴキブリも飼ってますよ(笑)。お風呂場にゴキブリがいると、水とパンをあげて。そしたら、パンに覆いかぶさって食べてましたよ。友達のお医者さんに聞いたら、ゴキブリって、あんなに嫌われているけど、人間には何にも害がないんですって。気持ち悪いだけだって。それに、2週間しか生きないっていうし、私は一度、「ねんねこしゃっしゃりま~せ」って、子守歌を歌ってあげたこともあるんです。そうしたら、歌っている間はうれしそうに髭(ひげ)を動かして、歌うのをやめたら、髭のピクピクが止まってました(笑)。小林一茶の俳句なんか見ると、小さなものにも愛情があったでしょ。私は、ああいう人が好き」

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