前立腺がんでも、極小の線源を前立腺内に留置する「密封小線源療法」という内部照射がおこなわれ、手術や外部照射に匹敵する治療成績を上げている。

 放射線治療は、根治目的以外にも幅広く活用されている。その一つが、がんによる症状の緩和だ。局所的な症状の緩和が得意で、特に骨転移の痛みには効果が高い。鎮痛薬が効きにくい痛みが軽減できることも多く、生活の質の向上に大きく貢献している。痛み以外にもがんからの出血を止めたり、臓器を圧迫しているがんを小さくするなど、放射線にできることは少なくない。脳転移の治療では、頭痛やまひなどの症状緩和だけでなく、がんの進行が抑えられ、延命効果も期待できる。

 なお、がんが遠隔転移をした場合はがん細胞が全身を回っていると考え、通常は病巣に対する局所的な治療はおこなわない。しかし「オリゴ転移」と呼ばれる少数個の遠隔転移に根治線量の放射線を照射すると、根治に近い効果を得られることがある。適しているのは定位照射や粒子線治療で、20年から転移性骨腫瘍および5個以内のオリゴ転移に対する定位照射に保険が適用されている。宇野医師は言う。

 「少数個であっても手術で取ろうとするとからだに負担がかかりますが、放射線であれば負担が少なく、挑戦しやすい。適応があれば積極的に治療をするようになってきているので、主治医に相談してみましょう」

最適な治療を選ぶために、放射線治療専門医に相談を

 放射線治療は多くのがんに効果がある。しかし放射線治療という選択肢があることを知らないまま、治療にたどり着けていない人は少なくない。また多様な照射法や治療機器が出てきている中で、最適な治療や病院を選ぶにはどうすればよいのか、迷う人も多いだろう。宇野医師は「まずは『放射線治療専門医がいる病院』に行くことが大事」と話す。

 「放射線治療が適しているか、どの照射法を選ぶべきかは一人ひとり違います。放射線治療専門医なら適切な助言ができますし、自院で扱っていない照射技術が適している場合には実施可能な病院を紹介するなど、相談に乗ってくれると思います」

 放射線治療専門医は日本放射線腫瘍学会のホームページにリストが掲載されている。宇野医師はこう続ける。

 「主治医の紹介やセカンドオピニオンなど何らかの形で放射線治療専門医とつながり、上手に利用してください」

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