余談ですが、よく「息子さんに旦那さんの仕事をどう説明するんですか」と聞かれるんですが、若い方たちは彼のことをYouTubeやTikTokに出ている人と認識しているようで、街に出ると「しみけんさん、写真撮ってください!」と声をかけてもらいます。息子はそれを見て育っているので、「人気者のパパでうれしい」という感じだと思います。

事実婚を解消した後も、週末は変わらず親子3人の時間を過ごしている(本人提供)
事実婚を解消した後も、週末は変わらず親子3人の時間を過ごしている(本人提供)

 でも、その写真を撮る私は、“じゃない方芸人”みたいな扱いで……。その立ち位置が嫌なわけじゃないんですよ! ただ、自分より人気も知名度もある人が常に隣にいることで、自分が小さく思えてしまう瞬間があって、それが毎日続くと、私ってただの脇役だなーってなんて思ってしまう時もあります。

――半径5メートルの出来事を的確に言語化できるのがはあちゅうさんの真骨頂だったと思いますが、ここ2年ぐらいは執筆を控えていました。

 そうですね、出産後は全然本が読めなくなり、言語化するのも避けていましたね。言語化って自分の中で考えを深めていって答えを出す作業なので、もしその答えが不穏なものであった場合、生活を揺るがしかねません。「もうけんちゃんのこと嫌い!」となる可能性もあったので、保留にしておきたかった。離婚を決めた7月から8月は言葉が湧いてきたんですが、相手があることなので世に出すのは難しかった。男性優位な社会構造やそこで育ってきた背景が悪いと思っていても、私の思いを外に出すとけんちゃんが悪者になるし、私自身が「パートナーの悪口を世の中に言いふらす人」というイメージにもなりかねない。どう表現したらいいのかは、今も悩んでいます。

 昔はどんどん本を出したいと思ったんですが、今はみんなインターネットで情報を得るし、その方が多くの人にリーチできるので、自分の発信スタイルも時代に合わせて柔軟に変えていきたいと思っています。結婚後は言語化もできてないので、言葉のプロでも作家でもなく、私は一体何のプロフェッショナルなんだろうと葛藤もあったんですが、半径5メートルの日常をコンテンツ化することに関しては自分の特技なんじゃないと思っています。今はショート動画が楽しくて1日1、2本作って投稿しています。長いこと活字に愛着や執着があったので、いつかまたやりたいと思う気持ちもあるんですが、今は、自分の場所から見える景色を、多くの人に見てもらいやすい形で発信しながら次の自分のスタイルを探しています。

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2024年この本が読みたい!「本屋大賞」「芥川賞」「直木賞」
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出産で変わった価値観 子どもの将来は「DJ社長みたいに!」