用意された部屋は、旅行サイトで見た写真のような雰囲気はまったくなく、ボロボロで、汚くて、狭くて(四畳半くらい)、空気もなんだか湿っていた。旅行サイトの写真は、もうこの角度しかないっていう絶妙な場所から撮られていて、完全にだまされた気分だった。料理も貧素で全然おいしくなかったし、最寄り駅から旅館までは近いと書いてあったのに徒歩40分もかかった。
あの薄暗~い部屋に入った瞬間の、彼女の「うわっ」って困惑した表情……ボクは一生忘れないと思う。それでも、ボクを慰めるように、彼女は「二人で初めての旅行だから楽しいよ」っていってくれた。ボクは、男として情けなさすぎて、悲しかったね。
改めて振り返ると、ボクの旅行嫌いは、子どもの時からすでに始まっていたように思う。家族旅行は何度かしたことはあるけど、「どこに行ったのか」「何をしたのか」などの詳細な記憶はほとんどない。きっと、全然楽しくなかったんだろうね。旅行中に、心の中で「家でゲームしていたほうが楽しかったな」って何度つぶやいたことか(笑)。
渋滞、人混み、宿泊先・飛行機の予約、スケジュールの調整、観光地に興味がないなど、旅行って、ボクが前向きになれない理由が多すぎる。
でも、よくよく考えると、普段から頻繁に仕事で全国各地に出かけているっていうのも前向きになれない大きな理由の一つかもしれない。つまり、仕事で、ある程度の旅行欲みたいなものが満たされているんじゃないかな。
例えば、ボクの冠番組「レンタルクロちゃん」(RCCテレビ)のロケであれば、有名な観光地にも行くし、おいしいものも食べるし、雄大な景色を見ながら、温泉やサウナにも入る。いわゆる一般的な旅行の醍醐味(だいごみ)みたいなものが、すべて仕事に詰まっているんだよね。それに、仕事であれば、前述したような宿泊先・飛行機の予約、スケジュールの調整などの作業も、スタッフやマネージャーがやってくれる。不思議なもので、そういった負担がないと、観光地に行くのもけっこう楽しいんだ。そんなことを考えると、わざわざプライベートで、めんどくさい作業を全部自分でこなしてまで、旅行にいくなんてのが、なんだかバカバカしく思えてしまうのかも(笑)。ボクの旅行嫌いもなかなか根深いね。
ただ、そんなボクでも、リチとの旅行だけは、めんどくさい作業もすべてやってあげたいと思っているんだよ。リチがまだ行ったことのないと言っていたユニバーサルスタジオジャパンにも、いつかは連れて行ってあげたいし。それに、いざとなったら、たかみな(高橋みなみ)に協力してもらえば、なんとかなるはず。リチー、ふたりっきりの旅行、絶対実現させるから楽しみにしててねー!
(構成/AERA dot.編集部・岡本直也)