ICT機器や検索エンジンは、適切に用いれば私たちの暮らしを豊かにしてくれるものです。しかし、様々な課題もはらんでいることを、十分に理解する必要があります。
ビッグテックの「外界」を想像する
無駄やストレスのない生活を営みたい。私たちが持つそんな願望は、社会のデジタル化を、加速度的に促進してきました。その波は、今や教育を始めとした、社会の根幹にまで及んでいます。現状の問題点について、堤さんは次のように解説しました。
「『ビッグテック』と呼ばれるGAFAMなどの巨大IT企業群は、自社サービスを売り込む上で、『利便性』『効率性』といったキーワードをちりばめて事業を展開してきました」「『もっと快適さが欲しい』という欲求を刺激する言葉が、そのままマーケティングに結びつく世界なのです」
場所や時間を問わず購買活動をし、学び、働く。あらゆる物事がネットを介してつながり、様々な格差が是正されるように見える世界は、「正しい」と思えるものです。
ただし既に述べた通り、その快さを裏打ちするのは、企業と消費者のいびつな結びつきです。デジタル技術の意義を喧伝する言葉に浸り、過度に依存してしまえば、支配的な構造が一層強固なものになるでしょう。政治と癒着し、市民への圧力と化す恐れも否めません。
だからこそ、手軽さや便利さの誘惑を受け流しながら、合理性を追求することで失われてしまう価値を想像してみる。そのような姿勢が、視野を広く保つと共に、変化を煽る言葉に踊らされない心を育むのかもしれません。