人間性の〝考査〞に利用される
就活の採用試験は、仕事や職場への適性の有無を判断するために行われます。企業が実施する筆記テストや、大学の授業の成績といった、比較的客観性がある情報も参照されるはずです。
しかし本田さんいわく、例えば女性の応募者の場合、生真面目な話し方が「冷たく、柔軟性がない」などとして、低評価となることもあるといいます。女性は常に他者を立て、人当たりが優しくあるべきだ—。そのような旧態依然とした価値観と、「コミュ力」が結びつき、不当な取り扱いにつながるケースは少なくないそうです。
「個人に内在しない性質を、あたかも実際にあるかのように捉える。更に『厳選採用』名目で、学生の人間性を〝考査〞に利用する。新卒採用の現場では、そういうことが行われています。評定者の私情を挟むため、判定に差別が含まれやすいのです」
新卒採用を通じて、企業は多様な人生背景を持つ学生との出会いを、学生は職務の内容にとらわれずに仕事を選ぶ機会を得られます。また応募者の将来性に注目するやり方が、若者の職業選択の幅を広げ、柔軟にしているとも考えられるでしょう。
ただ、採用担当者の胸三寸が合否に影響する点で、企業の裁量が極端に大きいことは確かです。本田さんが言及した権限の偏りを、「コミュ力」といった言葉が強めているところはないか。