(写真はイメージ/GettyImages)

 「自由な」働き方など、魅力的な言葉にこそ気をつけなければならない。評論家・近現代史研究者・辻田真佐憲氏は『うさんくさい「啓発」の言葉』(朝日新書)の中で、戦時下で行われたイメージアップ戦略を例に一見華やかな言葉遣いの裏側にある使用者側の『セコさ』の正体を解説している。

番組出演の傍らウーバーイーツで生計を立てる芸人は?

流布される「格好いい」職業像

 近年、デジタル化の進展により、時間や場所にとらわれない「自由な」働き方を売りにする職業が現れています。とりわけ象徴的なのが、企業と直接の雇用関係を結ばず、インターネット経由で単発の仕事を受注する「ギグワーク」と呼ばれる業態です。

 米国のネット通販大手アマゾンでは、個人に荷物の配送業務を委託する制度「アマゾンフレックス」を導入しています。日本法人アマゾンジャパンも、2019年に運用を開始。働く日時や配送ペースを、現場担当者の意志で決められるとしてきました。

 飲食店が作った弁当などを宅配する、いわゆるフードデリバリー業界にも、同様の仕組みが存在します。スマートフォンなどの専用アプリで、「個人事業主」のドライバーが配達依頼を受注し、顧客に商品を届けるというものです。

 一方、労働者と企業のいびつな関係性が問題視されることは少なくありません。飲食宅配大手ウーバーイーツは、注文者と利用店双方による、ドライバーの評価を実施。数値が平均を下回ると、ドライバーは一方的に受注アプリの使用を制限される恐れがあるとされています。

 アマゾンのケースを巡っても、AIが決めたルートで荷物を運ぶうち、長時間労働が常態化した配達員の苦境が報じられてきました。いずれの企業も、配送先管理などを独自のアルゴリズム(計算手順)で行っています。その詳細は労働者側に明かされていません。

 こうした現状について、辻田さんは語ります。「スマホや横文字を組み合わせ、何となく格好いい職業のイメージをつくりだす。でも現実には、十分な雇用保障がなされず、安い労働力として使い倒されてしまう。こうして雇い主の力が強まる結果となります」

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ギグワーカーは戦時中の応徴士にも似て