いつも明るいテリー伊藤さん(撮影/上田耕司)

日本の番組レベルは決して低くない

 大きなアクシデントがあったのは、「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ!!」(日本テレビ系)で、不正解だとクレーンにつるされたバスが海中に下りていくという罰ゲームの演出をしたときのこと。バスを海に沈めるという大がかりな仕掛けは、リハーサルができない一発勝負だったが、予期せぬハプニングが発生した。

「バスにたけし軍団らを乗せて水中に沈めたら、みんなが座っていたイスの留め金が水圧で外れて、イスが浮いてしまったんです。バスの屋根とイスの間に人が挟まれる事態となり、本当に危機一髪でした。あと少し救助が遅れたら死人が出ていたかもしれません。そこまで芸人が体を張ってくれたんだから、ちゃんとオンエアしましたよ」

 こうした企画は、どのようにして生まれたのだろうか。

「企画会議に7~8人が集まって、『おもしれえ、それやろうぜ!』みたいなノリでした。悪ガキみたいな連中がノリで決めた企画をどう映像化していくかを考えるのが楽しかったですね。だから、局にお伺いを立てるようなことはあまりしなかった気がします。ただ、オンエアの2日くらい前に、局の偉い人が見て『これはNG』とか『手直ししてくれ』というのはありました。でも、結構そのまま通っちゃってましたけどね(笑)」

 世界的に見て、日本が作ってきたテレビ番組のレベルは決して低くない、とテリーさんは言う。

「僕たちが作っているものをアメリカのディレクターがまねするために来日したこともあります。当時は日本のほうがレベルが高かったんですよ。今のYouTubeにも面白いものはあるけど、一発やってやり逃げみたいな企画が多い。僕らの笑いは継続する“連載の笑い”だったから」

 だが時代は昭和から平成、令和へと移り変わり、テレビの役割も大きく変化した。2003年にはBPO(放送倫理・番組向上機構)が設立され、放送への苦情や倫理上の問題に対して、第三者の立場から公正に迅速、的確に対応するようになった。

 当然ながら、時代によって求められるコンテンツは違う。「昭和の笑い」ではもう笑えない人がいることも事実だろう。それでも、“熱”を持った人だけがテレビを面白くできるという真理をテリーさんは教えてくれる。

(AERA dot.編集部・上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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