介護保険は制度設計上、様々な問題や欠陥を抱えていますが、日本が誇るべき財産です。それまで老人介護は「嫁」による「無償の介護」でした。それが、介護保険がスタートしたことで、介護を社会全体で支える「介護の社会化」の第一歩となりました。到底不可能だった「在宅ひとり死」もできるようになりました。24年間の介護保険の経験の蓄積と現場の進化は、世界に誇ってよいと思います。
若い人に伝えたいのは、「今の社会保障は高齢者に手厚い」という世代間対立を煽る言説に乗っからないでください、ということ。親をひとりで安心して置いておけるのも、あなたが親と離れて安心して生活できるのも、介護保険があるおかげです。
権利と制度は歩いて向こうからやってきません。手に入れたと思ったものも、知らないうちに奪われます。監視し、参加し、行動して、大切な介護保険制度を守ってください。
(編集部・野村昌二)
※AERA 2024年4月22日号