アライグマを捕獲するわなを手にする清水さん=東京都内、米倉昭仁撮影

「問題化してからでは遅い」と専門家

 拡大している「脅威」。しかし、公益社団法人・東京都ペストコントロール協会の会長で、アライグマの駆除を手掛ける「ヨシダ消毒」(練馬区)の清水一郎代表取締役は、

「アライグマを防除しなければならない最大の理由は感染症対策です。ところが、一般の人だけでなく、自治体も危機感がほとんどない」

 と嘆く。

 ヨシダ消毒は、新型コロナの流行初期、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の感染者搬送車や屋形船の消毒などにあたった会社だ。

 わなを仕掛けて捕獲しているものの、繁殖力が上回ってなかなか数が減らない。そんななかでアライグマを減らす最も確実な方法は、手に入れられるえさを減らすことだという。

捕獲されたアライグマの幼獣=兵庫県森林動物研究センター提供

 23区のアライグマが何を食べているか、清水さんがふんの中身を調べたところ、結果は意外なものだった。

「生ごみをあさったりもしますが、春から秋にかけては主に農作物や庭に植えられた果実を食べています。えさの乏しい冬の間はほぼイチョウの実、ギンナンだけを食べていたんです」

「東京都の木」であるイチョウは、都内のいたるところに植えられている。道路に落ちたギンナンは拾われたり、掃除されたりしてなくなるが、根元の土の上に落ちた実はそのまま残っていることが多く、これがアライグマのえさになるのだという。

 清水さんは、こう提案する。

クマ対策と同じで、庭のカキや柑橘類など、食べない果実はそのまま残さない。ギンナンもすべて掃除する。シンプルですが、アライグマを減らす有効な対策だと思います」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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