
「アメリカで、160年も前の法律が有効になるなんて」と驚いた方も多いのではないでしょうか。では、「人工妊娠中絶」に関する日本の現状はどうなのでしょうか。
日本では、明治時代(1907年)から続く堕胎罪(刑法212−216条)によって堕胎は禁止されていますが、母体保護法により、ある一定の条件を満たせば人工妊娠中絶が認められています。
人工妊娠中絶が認められる一定の条件とは、①身体的・経済的理由により母体の健康を損なう場合(原則として配偶者の同意が必要)、②暴行や脅迫によるレイプによって妊娠した場合であり、人工妊娠中絶ができる期間は、妊娠22週未満となっています。
配偶者の同意が必要なのは11カ国
実は、日本のように、人工妊娠中絶の際に配偶者の同意を必要とする国は、世界では、日本、台湾、インドネシア、トルコ、サウジアラビア、シリア、イエメン、クウェート、モロッコ、アラブ首長国連邦、赤道ギニア共和国の、たった11か国・地域のみ。G7(先進7カ国首脳会議)では、日本のみが配偶者の同意を必要としており、実は、日本は人工妊娠中絶において、もっとも厳しい制約を設けている国なのです。
駒沢女子大学の杵淵恵美子教授(※2)はインタビューの中で、堕胎法が作られた明治時代の日本について、「明治時代の日本は家父長制で、男性が了解しないことを女性が行ってはいけない、という考え方で法律が作られていました。」「これ(堕胎法)は、現代にはもう合わないので、国連からも是正が必要だと勧告されていますが、なかなか改正されません。」といいます。
産むか産まないかを決める権利は「女性の基本的人権」であるという「Sexual and reproductive health and rights(性と生殖に関するに関する健康と権利)」(※3)は、1994年の国際人口開発会議で提唱された概念です。
The World’s Abortion Lawsによると、世界192カ国では、人工妊娠中絶の際に配偶者の同意は必要としていません。2016年、国連女性差別撤廃委員会は、配偶者の同意要件そのものの撤廃を日本政府に勧告したようですが、杵淵教授が指摘しているように、配偶者の同意が必要な日本の状況は、残念ながら変わってはいません。