解散断行か、解散見送りで総裁選出馬断念か。切羽詰まってきた岸田首相にとって、目前のハードルは二つだ。一つ目は4月16日告示、28日投開票の衆院補欠選挙(東京15区、島根1区、長崎3区)。自民党は東京15区と長崎3区で公認候補の擁立を見送り、「不戦敗」となった。そのため、島根1区は負けられない選挙だ。島根県は竹下登元首相や青木幹雄元官房長官の地元で「自民党王国」だ。ただ、島根1区選出の細田博之前衆院議長は生前、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との密接な関係が指摘されたにもかかわらず、明確な説明を避け、批判が広がった。細田氏が会長を務めていた安倍派の裏金問題も批判された。
その細田氏の死去に伴う補選とあって、自民党は財務官僚OBを公認したが、支持者の動きは鈍い。立憲民主党は元衆院議員を擁立、共産党が自前の候補をおろして支援を決めるなど、連携が進んでいる。自民党が島根で敗退するようだと、自民党内では「岸田首相の下では総選挙は戦えない」という声が高まるだろう。
この1、2カ月が山場
もう一つのハードルは、裏金問題を受けた政治資金規正法の改正だ。衆参両院で4月11、12両日に特別委員会が設置され、まず衆院で本格的な審議が始まる。(1)政治資金収支報告書に虚偽記載などがあった場合、会計責任者が立件されれば政治家本人も罪に問われるようにする「連座制」の導入(2)政党から幹事長らに支給されながら領収書を公開しなくてもよい「政策活動費」の制度を廃止する、などが焦点となる。
岸田首相は、この法改正で成果を上げて解散・総選挙に向けた環境作りを進めたい考えだ。そのためには、立憲民主党など野党との話し合いが不可欠となる。裏金問題で関係議員への聴取などに積極的に動かず、岸田首相との溝が深まっている茂木敏充幹事長では野党との話し合いが進まないだろう。岸田首相がそうした事情をどう打開していくのか。この1、2カ月が、岸田政権だけでなく自民党、そして日本政治の将来を決める大きな山場となる。(政治ジャーナリスト・星浩)
※AERA 2024年4月22日号より抜粋