通常国会の会期末が迫るなか、解散に踏み切るのか、総裁選前の退陣に追い込まれるのか。岸田文雄首相は瀬戸際に立たされている。AERA 2024年4月22日号より。
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岸田文雄首相は4月8日から米国を「国賓待遇」として訪問した。10日のバイデン大統領との首脳会談では、軍事的台頭を続ける中国を念頭に自衛隊と米軍との連携強化を確認し、11日には連邦議会の上下両院合同会議で演説。「外交の岸田」を内外にアピールするのが狙いだ。
日本国内では、春闘で大企業を中心に大幅な賃上げが実現した。6月には、岸田首相がこだわった1人当たり計4万円の所得税、住民税の減税が国民の懐に届き始める。可処分所得が増え、消費が拡大し、長く続いたデフレ状況が転換するかもしれない。そうした経済状況を受けて、6月23日の通常国会会期末ごろには、内閣支持率を反転させたい。そのうえで、衆院解散・総選挙に踏み切り、9月の総裁選で再選、長期政権への流れを作りたい。それが岸田首相の本音だろう。
一方で、そうした流れができなければどうなるか。裏金問題の処分をめぐっては、自民党内に不満の声が渦巻く。内閣支持率も低迷し、この状況で解散・総選挙となれば、自民党議員の多くが討ち死にする。自民、公明両党が過半数を維持できずに政権交代となる可能性さえある。だから、自民党内では「岸田さんを羽交い締めしてでも解散させない」(閣僚経験者)といった本音が聞かれる。茂木幹事長もこの国会での解散には否定的だ。公明党も裏金問題で政権与党に逆風が吹き荒れる中での解散には反対している。
仮に岸田首相がこの国会で解散ができず、秋の総裁選を迎えるとすれば、自民党内では総裁選で「新しい顔」を選び、その下での解散・総選挙を求める意見が大勢を占めるだろう。岸田氏の再選の可能性はなくなる。総裁選への出馬断念に追い込まれて、みじめな「野垂れ死に」となることは明らかだ。そうした展開を考えれば、岸田首相が今国会中の解散にこだわる理由が見えてくる。