アフラトキシンは毒性が非常に強いため、多くの国は規制値を設けている。日本では1キロ当たり10マイクログラム(1マイクログラムは100万分の1グラム)を上回るアフラトキシンが検出された食品は、食品衛生法違反となり、排除される。
CDCの報告によると、ケニアで健康被害をもたらしたトウモロコシは一見してカビに覆われていた。それでも主食として毎日食べざるを得ない貧しい国や地域では、アフラトキシンによる健康被害が繰り返されてきた。多くの死者を出した背景には医療体制の不備もある。
CDCの調査によると、特に被害の大きかった地域で採取した約10%のトウモロコシのアフラトキシンのレベルは、1キロ当たり1000マイクログラムを超えていた。最高は8000マイクログラムだった。
紅麹サプリに当てはめると
ケニアでのアフラトキシン汚染を参考に、ペベルル酸が健康被害の原因だった場合の毒性を推察してみよう。
調査によるとケニア人が消費するトウモロコシは1日平均400グラムである。一方、小林製薬の問題となったサプリ商品「紅麴コレステヘルプ」は1粒200ミリグラム。同社は1日の摂取目安量を3粒としていたので、600ミリグラムとなる。ケニア人の主食の約660分の1の重さである。
つまり仮に、小林製薬の紅麹サプリにプベルル酸がケニアで検出されたアフラトキシンと同程度含まれていたとすれば、プベルル酸の毒性は理論上、アフラトキシンの600倍ほどになる可能性がある。
さらに浜田さんはもう一つの可能性を指摘する。プベルル酸の毒性がそれほど高くなくても、カビがつくるカビ毒の生産量が桁違いに多い場合だ。
もし、サプリの製造工程にカビが入り込み、成長したとしても、現場の従業員が気づかない程度であれば、そこで分泌されるカビ毒の量は「たかが知れている」と考えられるという。
「もし、プベルル酸が健康被害の原因であれば、アフラトキシンと比べてとてつもなく毒性が強いか、カビがつくるプベルル酸の生産量が既知のカビよりも非常に多くて大量の毒素がサプリに含まれていた。もしくは、その両方でなければ、今回の健康被害は説明がつきません」
実際、そんなことがあり得るのか。浜田さんは首をかしげる。