「美味しい」を凌駕する煩わしさ(イラスト:サヲリブラウン)

 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 先日、大変興味深い経験をしました。事の発端は、友人の一言。私も訪れたことがある某人気丼もの店と同コンセプトの店が近くにできたものの、いつ覗いても繁盛している様子がない。レビューを見れば、サクラとは思えぬアカウントが高評価をつけている。不思議なんですよね~とのことでした。

 ならば行ってみよう!と、好奇心に駆られ後日ひとりで足を運んでみました。単価が高い店でもないので、失敗しても平気です。

 入店すると、できたばかりの店内は清潔そのもの。注文と支払いはタッチパネル式の機械ですが、それほど気にはならない。カウンターに座り注文の紙を出すと、店員さんが笑顔で受け取ってくれた……のですが、肩に掛かる髪が結ばれておらず、マニキュアは黒。これは嫌がるお客さんもいそう。店員さんが目の前で調理してくれる店なので、ちと気になる。一方、人気店の制服は天ぷら屋さんやお寿司屋さんのような白衣で、「この値段で良い店に来れた」と錯覚させてくれます。

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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