さて、実食。目の前での調理(というか、盛り)には滞りなし。満を持して丼に箸を運ぶと、なんだか食べづらい。味の良さが打ち消されるほどに。混ぜてと言われたけれど、混ぜると大量の具材が丼からこぼれ落ちそう。食べ方案内には、混ぜたら丼の中身を海苔で包んで食べるとありました。しかし、丼に深く刺さった海苔はご飯にまみれ、うまく具材を巻けません。
違いが気になった私は、スマホで人気店の画像を検索しました。なるほど、あっちは丼が大きいし、海苔は別皿で提供される。だから、この煩わしさがなかったのか。
四苦八苦しながら食べ終え、再訪はしないと確信しました。「美味しい」を凌駕する煩わしさがあったからです。
人気店より量も多く、質も悪くない。しかし、食べていて楽しくはありませんでした。客が人気店のなにを好んでいるのか、理解していないと感じました。「わあ! 美味しい!」を一番に感じられる工夫が、人気店には随所にちりばめられているんだもの。
私は大満足で店を出ました。だって、すべてのBtoCに当てはまる話です。煩わしさは客足を遠のかせること、人気の因数分解を間違えると、とんでもないことになること。この程度の不満は言語化しづらく、店には届かないこと。いやあ、勉強になった!
※AERA 2024年4月15日号