デ・キリコのアパート。床の寄木細工のような模様が、下の絵《神秘的な水浴》の右部分、半裸の男性が立っているプールの水を表現するのに使われている。(提供:アフロ)
デ・キリコのアパート。床の寄木細工のような模様が、下の絵《神秘的な水浴》の右部分、半裸の男性が立っているプールの水を表現するのに使われている。(提供:アフロ)

――具体的には、どういうことですか?

 例えば、彼は晩年によく水浴の絵を描いているんだけど、ギザギザした木目調の水場を絵の中に頻繁(ひんぱん)に登場させているんです。これが、デ・キリコの家の床のデザインそのものだったんです。床を見て、もう驚嘆しましたね。そうか、この寄木細工のような水場の模様は、ここから来ていたのか!って。

――すごい発見ですね!

 また、彼は、自宅のベランダのS字形の形態を絵の中に取り込んでいます。様々な絵の中に巨大なオブジェとして持ち込んでいます。これらは、おそらくまだ評論家も気づいていないと思います。ベランダの柵の装飾そのものを描いているのです。生活空間の中のありふれたものを、意味と形を変えて別の場所で登場させている。シュルレアリスムのデペイズマンという手法です。あらためて、デ・キリコはすごい画家だなと思いましたね。今回の展覧会は、デ・キリコの後半生にもフォーカスを当てた、かつてないほど多様性を認めた回顧展になっていますよね。きっと素晴らしい展示になると思いますよ。楽しみにしています。

暮らしとモノ班 for promotion
「昭和レトロ」に続いて熱視線!「平成レトロ」ってなに?「昭和レトロ」との違いは?