旅人こそ、この映画を監督した竹内亮。彼はNHKの番組でツームーを上海に連れ出した。100階建ての高層ビルに地下鉄。初めて外の世界に目を向けた彼女は故郷に戻るなり手紙を竹内に送った。「民宿を開き、10年後にあなたに再会したい」。彼女は夢を実現させていた。
沢木耕太郎永遠の青春小説『深夜特急』の愛読者だった竹内は番組のオンエア後、もっと中国を知りたいと南京に移住して「長江沿いの民」になり、再び撮影に臨む。

©2024『劇場版 再会長江』/ワノユメ
「あれから日本でも中国人が身近になりました。職場でも、学校でもコンビニでも。でも彼らがどういうバックグラウンドを持っているのか多くの人が知らない。いつの間にか隣にいる中国の人を傷つけていることもある。中国=強権国家とか、空気が汚いとかのイメージもある。でも全ては人と人との出会いから始まるんじゃないか。そう思うんです。このドキュメンタリーで中国の『日常』を知ってもらいたかった」
源流の一滴を求めての旅は再会の旅でもあった。懐かしさとハプニング。いつの間にかそこが中国だという概念さえ忘れ、人としての源流、温かく、豊かで奥深い触れ合いの日々に身も心もゆだねる自分がいた。
竹内は冒頭の瀘沽湖での撮影秘話を教えてくれた。「2021年から22年のコロナ禍で観光客もゼロだった。でっかい湖にたった一艘の舟。そんなカットはもう撮れません」

©2024『劇場版 再会長江』/ワノユメ
「劇場版 再会長江」は日本に引き続き、中国本土1万1千館でも配給される。
(文・延江 浩)
※AERAオンライン限定記事