「セクシー田中さん」の問題で「著作者人格権」が注目を集めている。なぜ大事な権利は奪われ、原作トラブルが起きたのか。悲劇を繰り返さないためには、何が必要か。専門家に話を聞いた。AERA 2024年4月8日号より。
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今ドラマは「多産化時代」にあるといわれる。動画配信の普及で、一度つくったドラマは動画配信サービスに販売することで収益につながるからだ。ドラマはテレビ局にとって「ドル箱」となった。しかも、漫画は魅力的な物語やキャラクターの宝庫で、原作の漫画にはすでにファンがいるので一定の視聴率をとれる可能性が高い。ストーリーもつくられているので、テレビ局は原案を仕上げていく手間を省ける。
ビデオリサーチによれば、関東地区においてNHKと民放局計7局が23年に放送したドラマの延べ本数は6012本で、18年(5029本)と比べ5年間で20%増。こうして制作態勢にはひずみが生じ、ドラマの制作現場は「時間的にも人員的にも余裕がなく、常にタイト」(関係者)の状態だ。
「テレビ局が原作を非常に軽視していると感じる」
こう話すのは、編集者兼ライターで、マンガ解説者でもある南信長さんだ。
例えば、番組宣伝などで、漫画を原作にしているドラマの場合、そのことが明記されていないか、小さく触れているだけ。いまだに「テレビにしてやるからありがたく思え」といった驕りをテレビ側が持っている気がする、という。
「テレビ局は、原作漫画の人気に乗っかりドラマ化するのであれば、原作者の考えを尊重しなければいけません。それができないのであれば、オリジナルでつくるべきです」
制作者側の「時間がない」と言うのは、「全くの言い訳に過ぎない」と批判する。
かつて南さんが編集者として担当していた漫画がドラマ化される際、時間的余裕がなかった。しかしそんな中、プロデューサーは原作者の意見を取り入れ、原作者の満足のいく番組ができたという。