無理難題を言われたら 「要求を返す」のが◎

 突然飛んでくる「無理難題」。同僚や友だちならまだ抗議する余地がありますが、立場が上の断りづらい人に限って無理難題をいってきがちなのが困ったところ。

 拒否したらカドが立つので、仕方なく受け入れた経験を持つ人は少なくないはずです。

 無理難題をそのまま受け入れていると、心の中に相手に対しての不満や怒りが湧いてしまいます。それらが、自分のメンタルに悪影響を及ぼすことはいうまでもありません。

 そんな状況を打破できるのが、「要求を返す」ことです。

 たとえば、上司から残業を求められたとしましょう。しかもサービス残業です。

「悪い、今週も残業お願いできる?」

 たいていの人は、苦虫をかみつぶしたような顔をして、それでも嫌々ながら引き受けてしまうでしょう。これでは精神的によくありません。そこで、こちらからも何らかの要望をぶつけるようにするのです。

「ええ~、それじゃ終わったら夕飯おごってくださいよ」

 そんなに大きなお願いでもなければ、相手も「わかった、わかったから」と応じてくれるものです。うまくいけば、こちらも一方的に無理強いされたわけではないと感じられますので、心の中にうっ憤がたまらずにすみます。

 かりにこちらの要望を上司が断ってくるようなら、要望のレベルを一段階下げて、

「じゃあ、終わったら自動販売機の缶コーヒーでもおごってください」

 と再度交渉しましょう。ようするに、自分がほんの少しでも納得できるように、完全には相手のいいなりにならないようにするのがポイントです。

 クライアントから商品の値下げを求められたときも同様です。すぐに交渉に持ち込みましょう。

「商品の単価なんだけどさ、次回から1個100円でなく、85円にしてくれないかな」

「いいですけれど、注文の個数も2倍にしてもらえませんか?」

 こんな感じで切り返しましょう。

「そんなことをしたら、相手を怒らせてしまうのでは?」と思うかもしれませんが、そうはなりません。

 ノースカロライナ大学のベネット・テッパーは、347名の企業に所属しているマネジャーに部下とのやりとりを思い出してもらったのですが、マネジャーたちが好むのは、上司からの要求を「拒否」したり、「無視」したりする部下ではなく、「交渉」してくる部下であることがわかりました。

 上司は、「代わりに、○○してもらえませんか?」と交渉してくる部下のことを、そんなには嫌わないのです。安心して交渉に持ち込んでみましょう。

(内藤誼人:心理学者)

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