猫好きは「猫は困惑して見える」というが、ノリノリな音楽と動きで気分はアガる(撮影/写真映像部・和仁貢介)

知らない人生を垣間見る

 トレンドに詳しいニッセイ基礎研究所の研究員・廣瀨涼さんは言う。

「動画を作る人にとっては日常や自身の過去の体験の再現だったとしても、動画の視聴者にとっては非日常。他人の人生を、デフォルメされたユニークな物語として、垣間見ている感覚があるのだと思います」 

 SNSで発信された個人の体験談がバズる現象と似ているかもしれない。

ミームを見ると、制作者の気持ちと、猫の顔やしぐさとがリンクしていることがわかります。猫ミームが広がるうちに、『この動画はこんな感情』という解釈が多くの人に共有されるようになりました」

猫たちは「共通言語」でLINEスタンプのようなもの

 切り抜かれた動く猫たちは、いわば共通言語で、LINEスタンプのようなものだという。

 ただし、ガチの猫好きに猫ミームを見せると、戸惑った様子。こんな返事があった。

「うーん、踊る猫は困ってるように見えるし、頭を抱えて叫ぶ子猫は乳飲み猫で眠いだけじゃないかな。NOと叫ぶ猫はお風呂で洗われてるのかなと思うけど……、世の中が猫で盛り上がってくれるなら、野暮は言いません」

 そう聞いて、ふだん猫動画を見ているときと、猫ミームを見ているときの自分の情動に違いがあることに気がついた。

 猫動画を見ているときは、「猫かわいい」が気持ちの主軸だ。

 だが、猫ミームは猫のかわいさや癒やしを目的には見ていない。人間社会の縮図を、猫ミームを通してちょっとだけ俯瞰して見て、共感したり心を慰めたりしている。

登場人物が愛しく愛らしい

 たとえば頭を抱えて鳴く子猫のミームなら、「もうイヤ」と叫ぶのがあんなに小さな子猫だから、登場人物をなんだか無性に愛しくいじらしく感じてしまうのだ。

 この猫ミーム動画、起源は定かではないそうだが、2024年明けごろから一気に増えたという。今年の初めから流行しているタイプの猫ミームについて、前出の廣瀨さんは一度は調査を試みたが、あまりの数の多さに途中で諦めたという。

心の叫びを代弁してくれるのがこんなに小さな猫だから…(撮影/写真映像部・和仁貢介)
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