わたしの亡くなった祖母から言われた言葉。
祖父母は明治生まれ。当然のことながら太平洋戦争も経験した。
祖父は軍人だった。生き残ったものの、失業した。
祖母は、お嬢さん育ちで働いたことなどなかった。
でも、せんべい売りを始めた。
生きて行くために、人に頭も下げなければならないし、慣れない仕事でイヤなこともいっぱいあったはず。
それでも、口癖は、
「生きててよかった」
だった。
そして、いつも言っていた。
「孫の顔も見れて、孫と笑っていられるだけで幸せやわ」
「死んでしまったら、イヤなことも経験できないわ。生きているからこそ、つらいこと、イヤなことも経験できるんよ」
そんな祖母をつらい時は思い出す。
「そや、おばあちゃん、言ってたよなあ。『生きていることに感謝』と」
そして、生きていることに感謝する。
こんなことを言うと、「死ぬほうがラク」と言う人もいる。
わたしは、父が医者だったせいか、「死にたくない」と、言いながら死んで行った人たちも、いっぱい知っている。
だからこそ、「生きる」ということにこだわっている。
ただし、わたしの祖母も、「死にたい」と言ったことがある。
ガンの末期だった。
あんなに生きていることを感謝していた祖母が痛みに耐えられなくて
「もういいわ。こんなにしんどいなら死にたい」
そう言った。
もちろん、わたしたちは、
「何、あほなこと言うてるの」
そう言った。
その後、昏睡状態になって、そのまま亡くなった。
そんな祖母の最期をわたしたちは看取った。
だからこそ、やっぱり、ギリギリまできちんと後悔ない人生にしたい。
つらい時は、祖母の最期のシーンを思い出して、立ち直っている。