政府が最低賃金の引き上げを主導し、人件費の負担が高まったのだ。文政権直前の2016年は法定最低時給が約6千ウォン(約676円)だったが、2023年には9620ウォン(約1084円)まで上がった。人件費が店舗経営を圧迫し、ファストフードやカフェを中心に「キオスク」というセルフ決済機が導入された。そして、その流れは加速して他業種に広がり、さらに日本を追い抜くような勢いでユニーク無人ショップ展開にたどり着いている。

「若者の街」と呼ばれる弘大には、無人ラーメン店が出現した。外からはどこにでもあるコンビニに見えるが、店内に入ると目を疑う。並んでいるのは数多くのインスタントラーメン。製品を自分で決済して買うだけではない。

弘大入口の近く。コンビニチェーンが展開する無人ラーメン店「ラーメン製作所」
無人ラーメン店には様々な種類のラーメンがそろっている。なかには日本語で書かれた品名のものもあった
メニュー選びをして調理もする

無人店でイートイン、トッピングまで

 麺と具を器に入れ、調理機に置き、スイッチを押すと自動でお湯が注がれる。その後、自動でIHヒーターが作動し、麺が煮込まれる。スイッチが切れたら、別途で購入したキムチ、ネギなども混ぜ合わせて、店内にあるラーメン模様のテーブルで食事ができる。ここまではコンビニのイートインコーナーのラーメン専門店の趣だが、韓国はそこでは終わらず、キムチ、ねぎ、チーズ、ハムなどの具のトッピングまで突き進んでいる。

 筆者もラーメンを作って食べてみた。好みのキムチとツナ缶詰のトッピングを別途購入し、自分だけのラーメンを作った。店員がいないから実に気楽。他の客の視線を気にせずにすすることができる。この無人店はSNSで有名になった。外国人観光客たちは、自分流ラーメンをつくって写真を撮っていた。日本人観光客も来るためか、日本語の案内まであった。

 無人ラーメンショップは弘大だけでなく、ワンルームマンションが密集している地域や、若者が訪れるエリアを中心に広がっている。インターネットコミュニティーでは、「家の近くに無人ラーメンショップができたので行ってみたい」という投稿をよく見かける。

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小学生の窃盗犯罪も