「報奨金で儲かる」ことはない
生息数を増やしているキョンの対策として、県内の自治体の多くが、キョンを捕殺した猟師に1頭あたり6千円の報奨金を支払っている。
「報奨金では、まったくもうからないですよ」
と、石川さんは引きつった笑みを浮かべた。
捕獲に使うくくりわな1個1万円弱。ねらったキョンではなく、力の強いイノシシがかかるとすぐに壊されてしまい、修理の手間や費用がかかる。
さらにやっかいなのが、アライグマだ。体は小さいが獰猛で、わなにかかると徹底的に噛んで使い物にならなくしまう。しかも生息数がかなり多い。
「アライグマにわなを壊されると、気力が失せます」
さらに毎日、設置したわなを見回らなければならないので、ガソリン代もばかにならない。
有害鳥獣の駆除は、ボランティアに近いのが実態だという。
命がただ「処分」されている
石川さんはもともと報道番組制作会社のディレクタ―で、テレビ朝日の「サンデープロジェクト」や後発番組の「サンデーフロントライン」などにも携わっていた。
14年に狩猟免許を取得し、翌年に東京からいすみ市に移り住んだ。現在は狩猟体験やグランピングなどを提供する合同会社「Hunt+(ハント・プラス)」を経営しながら、地域の獣害低減に取り組んできた。石川さんのもとには、千葉県の有害鳥獣の担当者も相談に訪れるという。
石川さんは、捕殺したキョンの活用を訴えてきた。その一つがジビエだ。
台湾でキョンの肉は高級食材として扱われているといい、赤みが主体の肉はとても上品な味だ。
最近は駆除した有害鳥獣を食肉処理する施設も、ジビエを提供するレストランも増えてきた。しかし、一般的な食肉としての需要がなかなか伸びていかないと、石川さんは嘆く。