「メチャクチャ寒いです!」と真冬にノースリーブでミニスカートのチアリーダー。

「寒いのに大変だね、学生さん?」

「そうです。二年生です」

「大学?……じゃハタチくらい?」

「はい。こないだ成人式だったんです」

「おめでとう!!(パチパチ) 」

「ありがとうございます。でも成人式で借金しちゃって……」

「え? どーゆーこと?」

「晴れ着を作ったんですけど、けっこう高くて……」

「はー」

「その支払いまだなんで、それをなんとかするために今シジミ売ってます」

「晴れ着は着たのか!?」なぜかタメ口の私。

「はい」

「!? 写真、見せれ!」

 ポーチからスマホを取り出して躊躇なく見せてくれたチアリーダー。なるほど、シジミ売りが晴れ着姿で微笑んでいる。

「レンタルじゃなくて誂えたの? だいたい晴れ着ってレンタルかお母さんのお下がりじゃないの?」

「私、妹が三人いて長女なんです。お父さんシングルファーザーで、ここまで独りで育ててくれて何とか成人式を迎えられたんです。だから妹たちにも着せてあげられるし、お父さんとお金出し合って無理して晴れ着作りました。一番安いヤツだけど……」

 酔っ払いはこの手の話に弱い。そして大好物。しかし、同席したシラフの人間が冷徹に耳打ちしてきた。

「……一之輔さん、どうせ作り話だよ。これバイトみんなで共有してるヤツでさ。そんなこと言えば酔っ払いが買ってくれるんだよ。騙されちゃダメ……」

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「……よし、わかった! おじさんが全部買う!!」