こんなこと言う人は心が汚れていて、心の翼が折れてるのだ。

「……よし、わかった! おじさんが全部買う!!」

「ダメだって!!」

「ありがとうございます!」すかさずシジミの小袋を全てテーブルに広げるチアリーダー。

「一万円あれば買える?」

「ピッタリです! 今20残ってるんで、ちょうど一万円です!」

「よしっ! じゃあ今日はこれで帰りなさい! 新宿なんて危険な街でそんなカッコでウロウロしてると何があるかわからないからね! いーかい! またおじさんを見かけたら声をかけなさい。いつでもシジミ買ってあげるから!」

「ありがとうございますっ!」

「ホントに買っちゃったよ、この人……」と、まだグズグズ言ってる心汚れし者たち。

「うるさいな! ウソでもいーんだよ! 成人式を迎えたってだけでめでてえじゃねえか! たとえ写真より実物が老けてても、この人はいつかは成人したんだよ! その祝いだよ! ただやるわけじゃない、シジミ買うんだからいいじゃねーかっ! チマチマしたこと言ってんじゃねぇーよっ!……ホラ! いいから持ってけ! で、とっとと気をつけてうちに帰れっ!!」

「声がデカいって!」

「ありがとうございます!…… でもウソじゃないです!」

「あー、わかったわかった!……オレは信じてるよ! こいつら、まだ疑ってるけどな! ところで、おねえちゃん。どこ住んでんだっ!?」

「茨城の龍ヶ崎です!」

「聞いたかーーっ!? ウソ偽りで『茨城の龍ケ崎』が急に口から出てくるかっ!? この目を見ろっ! 常磐線沿線に住んでる目だよっ!! 新宿から龍ケ崎までどれだけかかるんだよっ!! 早くしねえと明日になっちゃうからなっ!! お父さんと妹たちによろしくなーっ!!」

「ありがとうございましたっ!!!」

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