Mimi(ミミ)/高知県在住のYouTuber。著書3冊。自称「小心者で怖がりなのに、やってみたがり」。震災の教訓もあり、室内に「背の高い家具は置かない」と決めた(撮影/松岡かすみ)
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 先行き不透明な時代に、誰しも少なからず抱えている老後の不安。お金病気、特に仕事についておひとりさま女性のリアルなお仕事事情を取材した。AERA 2024年3月25日号より。

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「いくつになっても働くことは楽しい」と語るのは、60歳を過ぎてYouTubeデビューしたMimiさん(64)。シニアのオスとともに、高知県で一人暮らしをしている。

「初めまして。私の名刺はスマホで読み取ってくださいね」

 記者が取材で対面すると、Mimiさんは慣れた手つきでスマホ画面を差し出した。デジタル名刺だ。さすがは登録者数6万人超えのYouTuber。64歳にして、日常的にデジタルを使いこなしている。

 YouTubeを始めたのは、“座ってできる仕事”を探していた延長線上のことだった。結婚離婚、6年間のアメリカ生活と、20~30代はプライベートも何かと忙しかった。「仕事が大好き」と語る職の遍歴は、スーパーの広告制作、菓子やパンを作る職人、印刷会社、カフェ勤務と経験し、今もカフェで週に1回アルバイトを続ける。

動くことで未来開ける

 年齢とともにカフェの立ち仕事がつらくなり、新たな仕事がしたいと県が就労支援する「Webデザイナー講座」に60歳で応募。ところが「修了後に企業に就職できる人が優先」と、年齢を理由に受講できず、悔しい思いをした。

「国は長く働きましょうとは言うけれど、シニア向けの求人で紹介されるのは、清掃や配膳など体力がいりそうな仕事ばかり。技術を身につけて新たな仕事をしたいと思っても、そこには壁があることを実感しました」

 ただ、そこで諦めないのがMimiさんの強さ。「ならば自分で勉強しよう」とiPadを購入し、さまざまなコンテンツに触れ始めた。YouTubeを始めたのは、自分でスマホで撮影した動画を発信している人もいると知ったのがきっかけ。手探りで始めたところ、プチプラファッションや暮らしにまつわる発信が反響を集め、3カ月余りで視聴者数が大きく伸びた。

「60歳を過ぎたら、人生が縮小してくるだろうと思ったら、YouTubeのおかげで逆に広がって、こんなに良いことはないなって。興味を持って自分から動くことで未来が開けるのは、いくつになっても同じです」

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