なぜなら、バブル当時の成功体験にとらわれた世代の経営者たちが残り続ける限り、不景気の悪循環から脱却できないから。日本経済を再生するためには世代交代が必要で、そのために30年必要だということだ。
「バブル崩壊から30年ほど経ちます。若い起業家や海外で働きたい若者が出てきていて、日本の新陳代謝は良くなるかもしれない。新しい息吹も育ちつつあります。希望は、あると思います」
株高効果で「失われた30年」から脱却できるか話題になった。だが、幼少期から失われた30年のただ中にいた崔さんは「いままでいったい何が失われたんでしょうか」と言う。
「『失われた30年』と言うのは年配の人たちだと思いますが、バブル崩壊後を作り出したのはその世代の人たちです。『失われた』なんて他人ごとのように言わないでほしい。自分たちの手で失ったことを認識してほしいです。失われたのは財テク、不動産投資ではないでしょうか」
2023年の子どもの貧困率は10%超という厚生労働省の統計もある。
「是正すべき社会問題は増えたと思いますが、ジェンダーや国籍に関係なく生き方の選択肢を増やすことを認める社会になりました。『失われた30年』といいますが、良くなっている点もあることは忘れないでほしいです」
(編集部・井上有紀子)
※AERA 2024年3月25日号