※写真はイメージです
この記事の写真をすべて見る

 日経平均株価は2月下旬、史上最高値を更新。株価は上がったが、実際の経済はどうなるのか。わたしたちの暮らしへの影響はあるのか。エコノミスト・崔真淑さんに聞いた。AERA 2024年3月25日号より。

【ランキング】日本株と米国株の時価総額ランキング10社はこちら

*  *  *

「株高になったといっても恩恵は微々たるものかなと思います」

崔真淑(さい・ますみ)/1983年生まれ。グッド・ニュースアンドカンパニーズ代表。神戸大学経済学部卒。一橋大学大学院でMBA in Finance取得(写真:本人提供)

 崔真淑さんはこう言う。

 多くの人が中小の内需関連企業に従事していると予想されるからだ。

「バブル期は通信、金融、不動産といった内需企業が盛り上がり株価を押し上げたので、内需企業の賃金も上がりやすい構造でしたが、いま日経平均の上昇を持ち上げているのは海外での活動をメインにしているようなグローバルカンパニーです。ですがグローバルカンパニーに働く人が日本国内でどれだけいるでしょうか。多くの国内内需企業に勤める人からすると、グローバルカンパニーの株が上がっていても、自分たちの給与は上がらずに株価とのギャップを感じているでしょう」

 グローバルカンパニーに関係する人、株を持つ人は富む一方で、内需産業で働く人との格差が拡大していく。

「政府としては、グローバルカンパニーが盛り上がれば、ひいては内需をメインに活動する人たちの給料も上がる、つまりトリクルダウンが大きく起こるだろうと考えています。政府はここ10年間、こうした考えを続けていましたが、実際にトリクルダウンを起こせたでしょうか」

何が失われたのか

 所得格差を示す指標である再分配前ジニ係数は、およそ10年間上昇している。

「つまり、日本全体で所得格差が広がりつつあります。日本は先進諸国の中で平均給与があまりにも低く、多くの人の給与は30年間伸びていません」

 株高と、経済がリンクする日は来るのだろうか。

「しばらくは難しいでしょう。ですが、ポジティブな話をすると、著名な経済学者である故・青木昌彦は、バブル崩壊のあと不景気から脱出するのに約30年必要だと予言しました」

次のページ