(ここで、注文したクリームソーダが運ばれてきた。「わーかわいい!」と少し飲んでから)
すごくおいしいです。そういえば、子どもの頃にはクリームソーダの存在は知りませんでした。最初に飲んだ時には、別においしいとは思わなかった。でも今では、飲んでいるだけで昭和の気分になれて、楽しいんです。飲んでいる自分に酔いしれるために注文する部分もあります。でも、こちらのはすごくおいしいですよ。
昭和に興味を持ったのは、おばあちゃんの家でレコードを聴いたのがきっかけでした。曲はチェッカーズの「Song for U.S.A.」でした。私がそれまで聴いていた、ダウンロードされたデジタルの音とレコードのそれは全く違っていて、「これがアナログの音なんだ」と驚きました。
仕掛けもまるで違ってました。レコードに針を落として、すぐに音楽が始まるんじゃなくて、ちょっとプチプチッと鳴って、音楽が始まるまで時間がかかりました。一瞬、感情が止まる瞬間です。まだかなーと思っていると、音楽が流れ出しました。その「間」が良くて、鳥肌が立ちました。「ある意味特殊な短い間」に感情が揺さぶられるようでした。
その後は昭和に制作されたり、その頃を描いた映画を見るようになります。多くは角川映画でした。父に「昭和にハマったのなら、角川映画を見ろ」と言われたからです。
今の恋愛映画にはあるパターンがあって、「視聴者も一緒に考えよう」っていうストーリーが多いように思うんです。昔の恋愛映画って、交差点ですれ違って、そこから恋が始まるというようなベタな展開のパターンが主流でした。その「ベタ」がいいんです。どこか生々しさがスクリーンからにじんでくるのも気に入りました。
さらに心を惹ひかれたのは、映像から見えてくる、商品の数々です。音楽から入ったので、インテリアとか詳しくなかったんですけど、映画を見ていたら、当時の人たちが使っていた「不思議なモノ」たちが登場します。炊飯器に花柄がついていたり、扇風機の羽根が青かったりとか、いろんな発見がありました。家には、ジャラジャラしたすだれみたいなもの(たまのれん)があって、昭和の無駄な豪華さに気づくようになってきたんです。喫茶店も無駄に豪華だったり。