首相も地域の世話役も
早稲田の同窓会組織「稲門会」も近年、活動が活発化している。この30年ほどで関東圏出身の学生比率は約10ポイント増え、現在は7割弱。地方の人に早稲田を知ってもらおうと、途絶えていた「演奏旅行」を18年に復活させた。各地の稲門会が主催し、大学応援部を中心に学生が各地で校歌やパフォーマンスをホールや商店街で披露する。演奏後は進学交流会も開く。昨年と今年はコロナ禍で開催できなかったが、来年は東北を回る計画だ。
ほかにも今年、海外の稲門会が留学や海外赴任について無料相談に乗る仕組みも整えた。稲門会を統括する早稲田大学校友会の萬代晃代表幹事(74)は言う。
「早稲田はいろんな人が集まり、混沌のなかに学びのある『おもろい大学』です。卒業生も岸田(文雄)さんのような総理大臣から地域の世話役までいろんな人がいます」
比較の時点でおしまい
慶應出身で、現在は早稲田大学大学院経営管理研究科教授の入山章栄(あきえ)さん(48)は言う。
「早稲田は国際教養学部ができて留学生の割合が増え、経営面でも攻めている。一方、慶應は価値観をアップデートできておらず、いまだに大企業信仰から抜けられない。イノベーションは既存の知と知の組み合わせから生まれるもの。ネットワークは強くても、同じような人たちの組み合わせではイノベーションは出てきません」
加えて、「早慶を比較している時点で日本はおしまい」と手厳しい。
「大学のグローバルランキングでは、どちらも数百位。経営学の『レッドクイーン理論』では、ライバルを意識しすぎると似たようなことしかやらなくなり、大きな変化に対応できない。ガラケーがいい例です。『早慶』という時代は終わりにして、世界に目を向けないと日本は取り残されてしまう」
(文/編集部・深澤友紀)
※AERA 2021年12月13日号