社長数では卒業生の多い日本大学がトップだが、上場企業に絞ると慶應が272人の1位で、2位の早稲田に90人差(帝国データバンクが20年6月集計)。約3800の上場企業のうち、14社に1社が慶應出身の社長となる。財界での最大勢力だ。
一方の早稲田は、年収や社長の数などでは慶應に及ばない。だが、大学は意識的に地位や収入にこだわらず、社会や地域に貢献できる学生を育てている。同大キャリアセンターの塩月恭課長は言う。
「学生には企業名にとらわれずに自分がどう社会に貢献できるのかと考えてもらいたい。大学として主体的な進路選択ができるようにサポートしています」
地方公務員志望が増加
そのため、キャリアセンターでは学内外と連携し、就活支援以外にも力を入れる。1、2年生のころから多様な人と出会い、力を合わせる経験を重ねてもらおうと、ボランティアや地域連携、留学など40を超えるプログラムを提供する。地域に目を向ける学生も多く、21年卒では公務員になった割合が前年より1ポイント増えて5%に。国家公務員は減り、地方公務員が増えたという。
文化構想学部3年の吉澤拓真さん(21)は当初、東京で就職するつもりだった。だが、出身地・新潟の稲門会に入り、Uターンして働く卒業生の話を聞いたり、アンテナショップとコラボしたりした。新潟の良さを再確認し、戻りたい思いが強くなったという。
「大学でジェンダーを学んでいます。地方は東京と比べて人権への配慮が不十分な職場も少なくありません。いろんな背景を持った人が集まる早稲田で学んだ多様性を大事にする気風を、地方にも根づかせたいです」
文学部3年の北村風優さん(21)は介護や環境といった社会問題に関心があり、自分のスキルアップのためにITやコンサル業界を志望している。
「全国早稲田学生会連盟の委員長として学生と卒業生の交流イベントを開催するなかで、『将来こうしたいから今はこの経験を積んでいる』と話す先輩が多かった。私も経験を生かして社会に貢献していきたいです」