簡潔な文章にして様々な色彩をもつ、完成された世界の数々。コラム集には、小説やノンフィクションとは違う、どこかロックやポップスのアルバムのような手触りが、ある。
 朝日新聞朝刊1面コラム「天声人語」の執筆を1970年代半ばに約3年担当し、75年に46歳で急逝した、伝説の記者。その「天声人語」が収録された単行本が再構成され、「ベスト版」としてよみがえった。そこもまた、伝説のアーティストの“名盤復活”的空気を感じる。
 その視点の鋭さ、言葉選びの妙、構成、ウィット、リズム感。3分間にすべてが詰め込まれたロックやポップスの名曲のように、短い文章の中にギッシリ詰まった「うまさ」と「心地よさ」の連続に、うなる。そして、「アガる」。
 政治や国際情勢、スポーツに文化、身の回りのこと……多岐にわたる話題は、もちろん40年以上前のもの。しかし、そこで書かれていた本質は、さほど変わっていないのかも。名コラムもまた、時を経ても色あせないものだということを、再確認。

週刊朝日 2015年10月9日号

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