精子の質と数に年齢が影響

「精子の質と数に最も影響するのは年齢です。女性の卵子と同様、男性も35歳を超えると、一般的に精子の質、数ともに落ちてくる傾向にあります」(辻村教授)

 現在、日本の初婚平均年齢は男性が31.1歳、女性が29.7歳(2022年、厚生労働省調査から)。結婚から数年が経ち、「そろそろ子どもを」と考え始める年齢が35歳前後、あるいは30代後半〜40代前半であるケースも少なくない。

「そのため、子どもがほしいなら、なるべく早めに動いたほうがいいですよという話から始めることが多いのです。男性も年齢が上がるごとに、(パートナーの)妊娠・出産に至るまでの期間が長くなる傾向が明らかですから」(同)

 晩婚化、晩産化に伴い、「不妊治療をしても年齢的に難しく、子どもを諦めざるを得なかった」という話は珍しくない。「将来子どもを望んだとき、加齢によってかなわない可能性がある」という意識が若い世代にもあるのだとしたら、未婚男性の精子凍結はそれを防ぐための保険的な意味合いが強い。

プレコンセプションケアが進む

 辻村教授によれば、将来の妊娠を考えながら普段の生活や健康に向き合う「プレコンセプションケア」と呼ばれる考え方のもと、結婚前の早い段階から健康状態や妊孕性を測る検査を受けたり、生活習慣を整えようとしたりする動きが顕著になってきたという。精子凍結は、現時点ではパートナーもおらず、結婚するかもわからないが、「将来、子どもを持ちたいと思ったときに困らないように」という備えとしての行動だ。

「結婚を控えた人などが受ける『ブライダルチェック』と呼ばれる健康診断はこれまでもありましたが、『プレコンセプションケア』はさらにその手前の考え方で、若い世代の意識の高まりを感じます。年齢をはじめ、日頃の生活習慣も精子や卵子に影響を与えるという認識が少しずつ広がってきているからではないでしょうか」(同)

 一方、精子凍結は、子どもを持つタイミングについて男性がより自分ごととして考えるようになったことの表れとする見方もある。これまで妊娠・出産=女性の問題という風潮で、「女性が子どもをほしいタイミングで、男性が協力する」という意識が強かったが、少しずつ変わってきているらしい。

暮らしとモノ班 for promotion
「集中できる環境」整っていますか?子どもの勉強、テレワークにも役立つ環境づくりのコツ
次のページ
”自分のタイミング”がある