「社会全体がルールや思いをアップデートできたら、男性も女性も幸せになれるんじゃないかってよく思います」と語った小泉今日子さん(撮影:写真映像部・上田泰世 hair & make up:石田あゆみ styling:藤谷のりこ)

社会のアップデートを

──小泉さんは1982年にデビューしてから、ご自身の明確な意志を持ち、新たなアイドル像、女性像を自ら切り開き続けてきたと思います。小泉さんのように声をあげ、自分の意志で行動する女性の存在はますます求められていますが、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位と、とても低いです。

小泉:そうですね。子どもの頃、テレビのニュースで流れるピンクのヘルメットをかぶって何かを訴えている中ピ連(編集部注:中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合。1972年設立。人工妊娠中絶の制限への反対と、ピル解禁を目指した)のみなさんを少し怖いと感じていましたし、私自身、お父さんが働いて、お母さんはご飯を作って洗濯をしてといった古い価値観のなか、なんとなく恋愛をして、結婚して、ということを何の疑いもなく目指していた部分はあったと思います。

 だけど実際に結婚してみたら、あれ、なんか違う? 仕事に関しても、ちょっとずつあれ?と思うようなことが増えてきて。そういうときに、それこそ中ピ連の時代から、女性に開かれた社会のために誰かがちょっとずつ石を投げてくれていたんだと気がついて。フェミニズム的なことを理解している人が増えているとはまだまだいえないし、女性議員の数も少ない。大きなところでいきなりというのはなかなか難しいから、たとえば地方からとか、少しずつ変わっていけたらいいのかなとも思います。社会全体がルールや思いをアップデートできたら、男性も女性も幸せになれるんじゃないかってよく思います。

変化には痛みともなう

──2015年に個人での制作会社「明後日」を設立したあと、18年に所属事務所から独立しました。

小泉:もともと偉い人や古いルールが嫌い、みたいなところはあって(笑)。どこかの組織に属していれば、そこのルールはあります。若いころはそのルールの隙間をかいくぐっていろんなことを考えるのが楽しかったんですけど、50代が見えてきたあたりで、やっぱりそのルールの中だけでは収まりきらない思いがあって。だったらもう出るしかないと思いました。今はそのころ思ったことが少しずつ実現しはじめているところですね。

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