歯周病専門医の若林健史歯科医師

2018年から100回以上にわたって続いてきたこの連載も、ついに最終回となりました。筆者で歯周病専門医の若林健史歯科医師に、連載を通じて一番伝えたかったこと、「歯を大切にすることの重要性」について、語ってもらいました。

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「歯科の治療や費用に関して、疑問を持っている人はけっこういるみたいです。疑問に答える形で連載をやりませんか?」

 編集部からこう持ちかけられたことから、この企画はスタートしました。

「歯科の治療は1回で終わらないのは、お金をもうけるため?」「なぜ次の予約は翌日ではダメなのか?(早く診てもらいたいのだが、不可能なのか?)」「治療の途中で歯科衛生士に代わるのはなぜなのか?」……。

 質問は次から次へと投げかけられました。

 例えば、歯科治療が1回で終わらない大きな理由は、お金もうけのためではなく、腫(は)れたり、痛みが出ている歯を一度に治療すると、患者さんのからだに負担がかかるからです。これを話すと、編集部からは、「えっ?そうなんですか?」とびっくりされる……。

 私たち歯医者が思っているよりも、患者さんには歯科の情報が正しく伝わっていないこと。それどころか、誤解されていることが多い現実を知り驚きましたし、反省もしました。「あれも伝えなければ、これも伝えなければ」と回答しているうちに、あっという間に連載は100回を超えてしまいました。

 連載を通して一番伝えたかったことは、歯を守ることがいかに大切か、ということです。「そんなことわかっているよ」と思うかもしれませんが、今一度、その理由を知ってください。命に関わる病気と違い、歯の病気は軽視されがちです。しかし、その認識は違います。

 どんな動物も歯がなくなると、獲物を捕れなくなり、えさを食べられなくなるので死んでしまいます。人間はそうはなりませんが、歯がなくなると、野菜や硬い肉、魚などはかめなくなり、栄養が偏ります。

 最近は高齢になってから、がんの手術をする人もたくさんいます。大きな手術をした後は体力の回復のためにも、しっかり栄養補給をすることが大事ですが、歯がないと十分に食事が取れません。歯がない人はかめないので、脳に血流が行きにくくなり、認知症のリスクが高まるという報告もあります。

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若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

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