必要なのは、ODの背景にある子どもの生きづらさにどう向き合うかだ。
先の湯浅さんは、21年、依存症者を支援するサイト「碧の森」を開設し、ODなど依存症に苦しむ人の相談に乗っている。月20件以上の相談が寄せられ、相談に来るのは大半が親からだ。湯浅さんは、まず親に「子どもを責めないでほしい」と伝える。
「親から責められると、子どもは『どうせ私はやめられない』と自分を卑下します。親は『話を聞くから』というアプローチの仕方をして、身近な精神保健福祉センターや専門機関に相談してください」
精神保健福祉センターは、全国の都道府県と政令指定都市に設置され、本人だけでなく家族からの相談も無料で受け付けている。
湯浅さんはその上で、ODを防ぐには「学校での教育が必要」だと話す。
「私がそうでしたが、ODをすると自制心がなくなり、窃盗をしたり人を傷つけたりして逮捕されることもあります。刑務所は1回くらいは大丈夫と思うかもしれません。しかし前科の代償は大きく、社会的信用を失い、銀行口座が作れなかったり、賃貸物件を借りられなかったり、海外渡航ができないなど出所しても苦労は続きます。教育で、薬物依存の怖さだけでなく、逮捕されその後、社会に出た時の影響なども伝え犯罪抑止の啓発にも力を入れることが重要です」
子どもが孤立せず安心していられる居場所づくりを
中学1年からの約3年間にわたりODを続けた、富山大学に通う儚(はかない)さん(22、ハンドルネーム)は、定期的に中高生を対象にXの音声チャット機能「スペース」を使った「お悩み相談会」を実施している。多い時で90人近い若者が参加するが、悩みの半数近くは「OD」だという。
「やめたい」「でもやめられない」「しんどいので、死にたい」……。そんな相談者の声に、儚さんはこう答える。
「ODをしてでも生きてほしい」
ODはするものではないと思っている。ただ、自分がそうであったように、ODが生きる手段になっているのであれば、止めることはできない。そもそも死にたいと思っても、人生は簡単に終わらずに続く。それならば、人生をもう少し生きやすくするべきで、その手段がODなのであれば、ODをしてもいいと思う、と話す。