EducationUSAアドバイザー 市川敦子(いちかわ・あつこ)/1977年生まれ、東京都出身。高校2年時に単身渡米。高校・大学生活を米国で過ごした後、日本に帰国。2002年から現職。米国留学希望者への情報提供・相談業務を担っている(撮影/写真映像部・松永卓也)
EducationUSAアドバイザー 市川敦子(いちかわ・あつこ)/1977年生まれ、東京都出身。高校2年時に単身渡米。高校・大学生活を米国で過ごした後、日本に帰国。2002年から現職。米国留学希望者への情報提供・相談業務を担っている(撮影/写真映像部・松永卓也)
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 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA 2023年4月3日号にはEducationUSA アドバイザーの市川敦子さんが登場した。

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 米国務省が関わる留学支援のネットワーク「EducationUSA」のアドバイザーとして、20年以上にわたり、米国留学希望者を後押ししてきた。175を超える国と地域で働く400人以上のアドバイザーと協力しながら留学の相談に応じる。

 勤務する東京オフィスに寄せられる相談件数は、1年間で300件ほどに上る。若者たちが留学を希望する理由はさまざまで、相談内容は多岐にわたる。情報を提供する立場として、時代に合った新しい知識の吸収やスキルアップが欠かせない。

「何年たっても相談に訪れるのは常に若者です。自分をアップデートしながら若者のチャレンジに向き合っています」

 特定の大学や大学院を薦めることはしない。留学希望者が自分自身で大学や大学院への出願準備ができるように、米国側の情報を伝えたり、大学の探し方や手続きの方法などをアドバイスしたりする。

「簡単に答えを示すのが私たちの役割ではありません。その人に合った大学・大学院を見つけるための手段を伝え、最善を一緒に考えていくことを大切にしています」

 自身も高校2年の時に単身で渡米。現在と比べると高校生の留学は一般的ではなく、父親は猛反対だった。「留学までの道筋を全部一人でつけられるなら行ってもいい」。高をくくっていた父親の言葉を真に受けて、準備を開始。英語の教師や帰国子女の友人にアドバイスをもらいながら留学にこぎ着けた。

「親は1人では絶対無理だと思っていたのでしょうが、主体的な学びを重視する米国で学びたい気持ちが強く、諦めませんでした」

 そんな経験もあって、高校生たちにはなぜ米国に留学したいのか、留学して何をしたいのかをじっくり考えてもらうことにしている。

 なかには日本の学校にうまくなじめず、新しい世界を求めて留学を決める高校生もいる。どんな理由にせよ、目的と原動力がある人たちは揺るがない。留学先からメールを送ってくれたり、帰国して会いに来てくれたりして、充実した様子をうかがい知ることができた時が、最もやりがいを感じる瞬間だ。

「人生の大切な決断を一緒にした若者たちが未来を切り開く姿を見ると、いつも勇気づけられ、感動を覚えます」

(ライター・浴野朝香)

AERA 2023年4月3日号