昨今の性風俗業界についてまとめられた『日本の風俗嬢』(2014年、中村淳彦著)でも、「風俗嬢たちは自らの仕事をポジティブなものとして捉えるようになってきた」との記述があり、「どこにでもいる一般女性がポジティブに働いている。高学歴の者もいれば、家族持ちもいる。これが現在の普通の光景である」とある。90年代から性風俗関連の取材を続けてきた中村さんの感覚で言えば、“ブルセラ世代”と呼ばれた1980年代生まれが20歳になった2000年あたりから、性の売買に抵抗のない女性が急増したという。
その後、現在のように性風俗関連の仕事をポジティブに捉える女性が本格的に増えたのが、2008年のリーマンショックで雇用が本格的に壊れてからのこと。90年代までは性を売る行為は“転落の象徴”であり、大多数は「そこまで落ちたくない」という意識がまだ根強かったものの、リーマンショック以降は「自分の才能や技術に対して、男性客が安くはないお金を払ってくれている」、「誰にも頼らずに生きているのだから、私は平均的な女性と比べても勝っている。むしろ上層にいる」という意識が女性たちに見られたという。2000年代以降は友人の紹介や、求人サイトを通じて自分の意思で応募をしたり、繁華街でスカウトされたりと、「多くの女性が性風俗にポジティブに足を踏み入れている」とある。