※写真はイメージです(Getty Images)

 海を越えて“出稼ぎ”をする性風俗業の日本人女性が出てきている。出稼ぎを選ぶ女性たちを駆り立てるものは何なのか。背景の一つとして、国内性風俗の「低価格化」が進んでいることも関係しているようだ。朝日新書『ルポ 出稼ぎ日本人風俗嬢』(著:松岡かすみ)から一部を抜粋、再編集して紹介する。
 本書では、違法である性風俗業での海外出稼ぎの実体験のみならず、出稼ぎがはらむリスクやそこに至る社会的要因などを多方面から取材。個人の責任如何でなく、現代日本社会全体で考えるべき問題を提起している。

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 性の売買がカジュアル化し、低価格化が進んでいる現状だ。性風俗業に従事する女性たちに話を聞くなかで感じたのが、「止むに止まれぬ事情があって、“仕方なく”性風俗の仕事をしている」というよりは、「効率的に稼ぎたいから、“あえて”この仕事を選んでいる」というスタンスである。

 実際に女性たちからは、「これだけ融通が利いて、短時間で稼げる仕事は他にない」「朝9時から夕方5時まで机に向かう仕事より、短時間集中型の性風俗の仕事が自分には合っている」「期間限定で目標を持って働くには、悪くない働き方だと思う」など、性風俗の仕事を前向きに捉える声が多く聞かれた。無論、「親や友人には言えないけど」「堂々と人に言える仕事ではないことはわかっているけれど」といった枕詞は付くものの、性風俗の仕事について、無理してポジティブな発言をしているのではなく、率直な意見として、あっけらかんと話しているように見える。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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性風俗の仕事がポジティブなものに