神奈川新聞論説・特報面に2014年7月以降に掲載されたシリーズ連載を書籍化した。安保法案・米軍基地問題・ヘイトスピーチなど、近年注目された問題に関わった市民や著名人への取材記事が中心となっている。
 テーマは様々だが、対象者に共通するのが問題への「当事者意識」だ。特定秘密保護法採決後、ニュースキャスターの「民主主義が終わった」という言葉に「いつ終わったんだよ」と苛立ちを隠さないSEALDs(学生団体)の男性、辺野古への新基地建設を聞き「自分の目で確かめたい」と現地に飛ぶ沖縄出身の大学生……。誰しもが、社会で進行する現実に自身の全存在をかけて向き合っている。
 記者も然りだ。ヘイトスピーチ・デモへの激しい抗議活動を当初「どっちもどっち」と感じたとある記者は、参加者から「傍観者でよそごと」の感覚だと逆に叱咤され、目を凝らすために現場に通い続ける決心を固めたという。ニュースは古びるのが常だが、「時代の当事者」たちの姿勢は普遍的なメッセージとして心に刻まれる。

週刊朝日 2015年10月2日号