亀井静香(かめい・しずか)/1979年衆院初当選。運輸大臣、自民党政調会長などを歴任。2005年に自民党を離党し国民新党を結成、09年の政権交代の一翼を担う。17年、政界引退(撮影/写真映像部・上田泰世)

 29日午後、自民党派閥の政治資金規正法違反事件を受けた衆院政治倫理審査会(政倫審)に岸田文雄首相らが出席。現職首相が政倫審に出席するのは初めてで、報道関係者の傍聴やテレビ、インターネット中継を認める全面公開されたことも話題だ。自民党への信頼回復は果たされるのか? 過去の記事を振り返る。(「AERA dot.」2024年1月24日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時)

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 自民党派閥の裏金事件は、現職国会議員の逮捕にまで発展し、政界を揺るがせている。26日召集の通常国会を前に、岸田文雄首相は「政治刷新本部」を発足させたが課題は多い。地に落ちた信頼を取り戻せるのか。元自民党政調会長・亀井静香さんに聞いた。AERA 2024年1月29日号より。

 金は政治家の「道中手形」。手形がなければ政界はわたっていけないんだ。国が選挙の面倒を見てくれるわけじゃない。当選してからも国費で雇える公設秘書は3人だけでしょ。それで選挙区を見て、地方政界の裁きをやるんだ。選挙区のあちこちに私設の秘書を置かなきゃどうにもならない。アメリカなら上院議員が公費で雇える秘書の人数に制限がなくて、20人も30人も抱えているだろ。それ以外にも金はかかる。金がかかることを悪だと言ってしまえば、これはどうにもならんな。

 俺が派閥の会長だったときも、議員たちに配っていたよ。派閥の金じゃなく、自分の政治団体の金でね。それが何でいかんの? 親分が子分どもに食い扶持を渡すのは当たり前じゃろう。ただ、政治資金収支報告書の記載は現在より甘くて、1円から領収書を保管しろって法律ではなかったけどね。

 今回の件も、収支報告書にそっくり書いておけばなんの問題もなかったんだ。安倍派だけでなく、俺のつくった志帥会(現・二階派)でも2億円の不記載があったという。なんで書かなかったのかね。きれいに集めてきれいに使えばいいのに、わからない。バカじゃんな。

 検察は安倍派幹部の立件を見送る方向のようだが、これでは終わらんと思うよ。検察審査会に行くだろうし、起訴すべきだって結論が出るかもしれんね。

「派閥は必然だね」

 昔は派閥の役割は明確だったよ。大臣にする、ポストを与える。それから総裁選の土台になる。派閥が総理をつくってたんだよ。今は派閥が弱くなったね。派閥にいれば大臣になれるわけでもない。それでも、完全に派閥がなくなれば党としては都合が悪いだろうね。派閥があれば、集団の親分と話をすれば意見を集約できる。それに、派閥はなくならないよ。派閥をなくすって、ずっと言われていたことだ。でも、なくならん。人が3人集まるところには必ず派閥ができる。派閥が正しいというよりも、必然だね。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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